2026年4月3日、スマートフォンやパソコンで遺言本文を作成できる新しい遺言方式「保管証書遺言(いわゆるデジタル遺言)」の創設などを盛り込んだ民法改正案が閣議決定されました。1998年以来約28年ぶりとなる遺言制度の大改正です。現在国会で審議中であり、成立すれば施行は公布から2年6か月以内(保管証書遺言の実施は3年以内)となる見込みです。本記事では改正案の主なポイントを解説します。
改正案の3つの柱
① 新方式「保管証書遺言」(デジタル遺言)の創設
② 自筆証書遺言の押印要件の廃止
③ 成年後見制度の見直し(終身制廃止・補助への一元化)
※ 施行:公布から2年6か月以内(保管証書遺言は3年以内)で政令が定める日
① 保管証書遺言(デジタル遺言)の創設
最大の目玉は、パソコン・スマートフォン等のデジタル機器で遺言本文を作成できる「保管証書遺言」という新方式の創設です。
現行制度における遺言の方式は主に次の2種類です。
- 自筆証書遺言:全文・日付・氏名を自書し押印が必要。手軽だが形式不備で無効になるリスクあり。
- 公正証書遺言:公証人が作成。証人2人が必要。形式上は確実だが費用・手間がかかる。
新設される保管証書遺言の主な特徴は以下のとおりです。
- デジタル機器で本文を作成可能:全文を手書きする必要がなく、パソコン・スマホで作成したデータをそのまま使える
- 法務局(遺言保管所)への保管が義務:作成後、必ず法務局に原本を保管することが条件。自宅保管・紛失リスクがなくなる
- 氏名の自書(署名)は必要:本文はデジタルでよいが、本人確認のため氏名のみ自書が求められる
- 押印は不要:従来の自筆証書遺言で必須だった押印が不要に
- 証人は不要:公正証書遺言のように証人2人を用意する必要がない
- 家庭裁判所の検認が不要:法務局保管のため、相続開始後の検認手続きが省略される(現行の法務局保管制度と同様)
② 自筆証書遺言の押印廃止
現行の自筆証書遺言では、全文自書・日付・氏名に加えて押印が法定要件とされています。改正案では、この押印要件が廃止されます。
押印のない遺言書は現行法では無効ですが、改正後は署名(氏名の自書)があれば押印がなくても有効な自筆証書遺言として扱われます。ただし、押印がなくても遺言者の意思の確認という観点から、実務上は引き続き押印することが推奨される見込みです。
③ 成年後見制度の見直し(参考)
同改正案には、成年後見制度の大幅な見直しも盛り込まれています。現行では一度後見が開始されると終生続く「終身制」が問題視されてきましたが、改正後は必要な期間に限定した後見に移行し、現行の「補助」「保佐」「後見」の3類型を「補助」に一元化する方向です。遺言能力の確認や相続対策において後見制度を活用している方は今後の動向に注目してください。
現時点での注意点 ─ まだ施行されていません
この民法改正案は2026年6月現在、国会で審議中です(閣議決定は2026年4月3日)。成立後、施行は公布日から2年6か月以内(保管証書遺言は3年以内)とされており、実際にデジタル遺言を作成できるようになるのは早くとも2028〜2029年頃の見込みです。
現時点では自筆証書遺言・公正証書遺言が有効な遺言方式です。遺言書の作成をお考えの方は、施行を待たずに現行の方式で対応することをお勧めします。
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