厚生労働省は2026年9月15日、令和7年(2025年)中に全国の労働基準監督署等が技能実習生・特定技能外国人を使用する事業場に対して行った監督指導・送検の状況を公表した。技能実習生を使用する事業場では13,148事業場を監督指導し、うち9,619事業場(73.2%)で労働基準関係法令違反が認められ、重大・悪質な事案として26件が送検された。ある土木工事会社では、技能実習生からの「残業代が支払われていない」との申告を契機とした調査で、時間外割増賃金の不足額約110万円の不払いが判明している。

監督指導の全体状況

📌 技能実習生関係(令和3~7年の推移)
  • 令和3年:監督指導9,036事業場/違反6,556事業場(72.6%)
  • 令和4年:9,829事業場/7,247事業場(73.7%)
  • 令和5年:10,378事業場/7,602事業場(73.3%)
  • 令和6年:11,355事業場/8,310事業場(73.2%)
  • 令和7年:13,148事業場/9,619事業場(73.2%)

主な違反事項は、①使用する機械等の安全基準(労働安全衛生法20~25条、2,994件・22.8%)、②健康診断結果についての医師等からの意見聴取(同法66条の4、2,066件・15.7%)、③割増賃金の支払(労働基準法37条、2,045件・15.6%)の順に多かった。以下、労働条件の明示(12.6%)、衛生基準(11.9%)、年次有給休暇(11.7%)、労働時間(10.7%)、賃金の支払(9.3%)、健康診断(8.8%)、就業規則(8.5%)と続く。

業種別の違反率

主な業種別では、建設(土木工事業・建築工事業等、監督指導2,808事業場)の違反率が80.2%(2,252事業場)と最も高く、主な違反事項は割増賃金の支払(645件・23.0%)と健康診断結果についての医師等からの意見聴取(644件・22.9%)であった。農・畜産は75.4%(444事業場)、繊維・衣服製造は72.5%(366事業場)、食料品製造は71.8%(1,248事業場)、機械・金属製造は68.6%(2,416事業場)となっている。

具体的な監督指導事例

厚生労働省が公表した資料には、代表的な事例が3件紹介されている。

事例1(土木工事業):技能実習生から「残業代が支払われていない」旨の申告があったことを契機に、労働基準監督署が立入調査を実施した。その結果、週40時間を超えて労働した時間に対する割増賃金が支払われていなかったため是正勧告を行ったほか、実習生が業務上負傷し療養(不休)した際、健康保険を使用して治療費を本人に負担させていたことについても是正勧告を行った。会社は、週40時間超の労働に対する時間外割増賃金の不足額合計約110万円を支払うとともに、業務上の負傷に係る本人負担分の療養費を支払い、健康保険を使用していた分の費用も返還した。

事例2(金属製品製造業):工場内で技能実習生が玉掛け用具の吊りフックを吊り荷の鋼板に掛けていた際、オペレーターが天井クレーンの運転を開始し、実習生が鋼板と吊りフックの間に手を挟まれて負傷する労働災害が発生。労働基準監督署の調査で、クレーンの運転について合図等を定めておらず、合図を行わせていなかったことが判明し、是正勧告となった。会社はクレーン運転の合図を定め、荷を吊り上げる際は周辺労働者に声がけを行うこととし、外国人労働者にも理解しやすいようイラスト付きで作業場所付近に掲示して周知した。

事例3(金属製品製造業):別の工場で、技能実習生がプレス機械による金属曲げ加工を行っていた際、金属板を保持していた右手が滑り、機械に挟まれて負傷する労働災害が発生。当該機械は危険限界に手が入らないよう安全装置の設置や専用治具の使用等の措置が必要だったにもかかわらず講じられていなかったため是正勧告を受けた。あわせて、月60時間を超える時間外労働について5割以上の率で計算した割増賃金が支払われていなかったことも是正勧告の対象となった。会社は金属曲げ加工の作業を専用治具を両手で用いて行う方法に改め、作業手順書を作成して周知教育を行い、不足していた割増賃金約1万円を支払った。

申告と送検の状況

令和7年に技能実習生から労働基準監督署等に対してなされた法令違反是正の申告は108件(令和6年112件からやや減少)で、内容は賃金・割増賃金の不払(93件)、解雇手続の不備(15件)、最低賃金額未満の支払(7件)の順に多かった。重大・悪質な事案として送検されたのは26件で、内訳は労働安全衛生法違反19件(うち安全基準11件、労働時間4件、就業制限3件等)、労働基準法・最低賃金法違反7件(最低賃金の効力2件、休業補償1件等)であった。

特定技能外国人関係の状況

特定技能外国人を使用する事業場については、8,082事業場を監督指導し、うち6,179事業場(76.5%)で労働基準関係法令違反が認められた。主な違反事項は、使用する機械等の安全基準(20.7%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取(16.7%)、割増賃金の支払(16.3%)の順で、技能実習生関係とほぼ同様の傾向であった。重大・悪質な事案として送検されたのは9件

まとめ

  • 厚生労働省が2026年9月15日、令和7年の技能実習生・特定技能外国人使用事業場への監督指導・送検状況を公表
  • 技能実習生関係:13,148事業場を監督、9,619事業場(73.2%)で違反、送検26件
  • 特定技能外国人関係:8,082事業場を監督、6,179事業場(76.5%)で違反、送検9件
  • 建設業の違反率は80.2%と最も高く、割増賃金不払・安全基準違反が主因
  • 公表事例では、割増賃金約110万円の不払い、クレーン合図未実施による労災、プレス機による負傷事故等が是正勧告の対象に

実務上のポイント:監督指導は技能実習生・特定技能外国人本人からの申告を契機に行われるケースが多く、令和7年の申告108件のうち賃金・割増賃金の不払が93件を占める。実習実施者・特定技能所属機関は、週40時間超の労働に対する割増賃金の計算方法(月60時間超は5割以上)、機械作業における合図の徹底や安全装置の設置状況、業務上負傷時の労災保険(健康保険ではなく)の適用について、今一度点検することを推奨する。監理団体・登録支援機関としても、巡回指導の際にこれらの点を重点的に確認する体制が求められる。ご不明な点はさくら中央法務事務所(法務省認定申請取次行政書士)にご相談ください。