共同通信と日本経済新聞は、在留資格「経営・管理」の外国人で2026年上半期(1〜6月)に再入国手続きをせず出国した人が953人に上り、前年同期(246人)の約3.9倍になったと報じた(共同通信は2026年10月15日付)。出入国在留管理庁の統計に基づく数値で、2025年10月の許可基準の厳格化が影響したとみられている。
報道された数値の要点
- 出国者数:「経営・管理」の外国人で再入国手続きをせず出国した人は、2025年上半期が246人、2026年上半期が953人(約3.9倍)。共同通信は「日本に戻らないケースが多いとみられる」と伝えている
- 月別の推移(日経):2025年秋まで月に数十人だったが、2025年12月に114人、2026年は6月まで月100〜200人台で推移している
- 在留者数:「経営・管理」の在留者は2025年末時点で4万6781人で、2020年末(27,235人)の約1.7倍(入管庁の在留資格別の統計表による)
- 申請件数:厳格化以降の5か月間の申請件数は、直前の5か月間と比べて約96%減少したと入管庁が既に明らかにしている(日経)
報道は、出国した人ごとの理由や、在留期間の更新を断念した人数までは示していない。数値は「再入国手続きをせず出国した人数」であり、更新を断念した人の数として報じられているわけではない。
背景:2025年10月16日に許可基準が厳格化
入管庁は2025年10月16日に上陸基準省令等を改正した(施行)。共同通信によると、資格を得るために実体のない会社を設立するケースなどが問題視されていた。平口洋法相は2026年6月の参院法務委員会で、厳格化の理由として、許可基準が諸外国の同様の制度と比べて緩く、移住目的の方法として悪用されているという指摘があったことや、在留審査で事業実態がないと判明する事業もあったことを説明した(日経)。改正後の主な基準は次のとおり(入管庁の資料)。
- 常勤職員:申請者が営む会社等で、常勤職員を1人以上雇用すること。対象は日本人、特別永住者、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格の外国人に限り、別表第一の在留資格の外国人は含まれない
- 資本金等:3,000万円以上。法人は払込済資本の額(資本金の額)または出資の総額、個人事業主は事業を営むために必要なものとして投下されている総額(従来は500万円以上)
- 日本語能力:申請者または常勤職員のいずれかが、日本語教育の参照枠のB2相当以上の日本語能力を有すること
- 経歴:経営管理または事業に必要な分野の博士・修士・専門職の学位、または3年以上の事業の経営・管理の経験があること
- 事業計画書:経営に関する専門的な知識を有する者(中小企業診断士など)による確認が義務付けられる
東京商工リサーチによると、2024年に日本国内で設立された法人14万3367社(個人事業主などは含まない)のうち、資本金3,000万円以上は1,491社で、1%にとどまる(日経)。同社情報部の後藤賢治課長は「小規模企業が新基準を満たすのは難しい。外国人が廃業すれば、影響は原材料の卸元や事業用不動産を賃貸していた日本企業にも及ぶだろう」と指摘している(日経)。
既に在留している人の更新の扱い
入管庁のQ&Aによると、既に「経営・管理」で在留している人が施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までに在留期間更新許可申請を行う場合は、新基準を満たさなくても、そのことのみをもって不許可になることはない。「3,000万円を準備できなければ帰国しなければならない」という説は「事実ではない」とされている。3年経過後の更新でも、経営状況が良好で法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新時までに改正後の基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮して判断され、資本金等が3,000万円に満たないことのみをもって一律に不許可処分となるものではない。
一方、日経は、新基準とは別に、経営実態などの審査が従来より厳しくなったとの声もあると伝えている。入管庁のQ&Aも、更新審査では労働関係法令の遵守状況、社会保険・雇用保険・労災保険の加入状況や納付状況、事業に必要な許認可の取得状況などに問題がある場合には、消極的な要素と判断され、更新が認められない事例もあるとしている。
実務上のポイント(行政書士の見解を含む)
- 報道の数値は「再入国手続きをせず出国した人数」であり、出国の理由は個別には示されていない。自社・自身の更新可否は、数値ではなく個別の状況(経営状況、納税、社会保険の加入・納付、許認可)で判断される
- 入管庁の資料では、在留期間中に正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められない。出国を伴う計画がある場合は、時期・期間と事業活動への影響を事前に整理する
- 更新時には、労働保険・社会保険の適用状況と保険料の納付状況、事業所として納付すべき国税・地方税の納付状況が確認される。経過措置の期間中も、これらの履行状況を整えておく
- 個別の更新見込みや基準適合の見通しは、事案ごとの確認が必要である。当事務所の経営・管理の更新サポートはこちら
情報源
- 共同通信「外国人「経営者」出国3.9倍に 26年上半期前年比、厳格化影響」(2026年10月15日):https://news.yahoo.co.jp/articles/42e12de4248a716319bc13027a2b7d5106aeb146
- 日本経済新聞「「経営」資格の外国人、上半期の出国3.9倍 資本金など在留要件厳しく」(会員限定記事。全文を編集部で確認):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD315GJ0R30C26A8000000/
- 出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A・改正に関するガイドラインを含む):https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(在留資格別の表):https://www.moj.go.jp/isa/content/001459094.pdf